1分でつくる!Scratchで拡散シミュレーション

水槽にポトっと垂らされた色水が、モワモワーっと拡がってやがて水槽の中全体へ均等に広がり行く、そんな拡散現象ですが、あれは水分子が互いにぶつかり合って、結果それぞれが全くランダムに移動するうちに起こるのだというのを本で読んで、「へぇーっ!」っとなったら、無性に試してみたくなりました。

こういうシンプルなのをパッと試してみようと思ったら、やはりScratchです。何しろ新規作成した時点で、スプライト(画像オブジェクト)が配置されてて、わずかなブロックを追加してやるだけで、すぐに「動かしてみられる」のですから。

で、早速組んでみたのがこんなスクリプト。1分でできます。何をしているかというと・・・、

  • 自分(猫のキャラクター)のクローン(複製)を300個つくる
  • 300個のクローンそれぞれに、ランダムな角度を向いては、ほんの少し移動を2000回ずつ実行させる

300個というクローン数はScratchの限界によるもので。Scratchでは同時に表示できるスプライト・クローンの数の上限が約300(正確には302だったかな)になっているためです。これ以上クローンしようとしても表示されません。2000回というのは適当です。増やしたり減らしたりして色々試してみました。

大量の猫(cat)がクローンされ、同一座標上に重なって配置されます(一匹に見えるけど三百匹が重なっています)。その後まもなく、それぞれてんでにチョコチョコ動き始め、あとは確率の問題でN回移動後の座標の散らばりがどんどん大きくなっていきます。

こんな感じで、

散らばっていって、

なるほど、見事に拡散していきます。
ひとつひとつを見ると、かなりふらふらと動き回っているのですが、全体としてみると、最初の一点に重なった状態から、一貫して散らばっていくのがわかります。まなゲーらぼの子どもたちにも見せてみましたが、こういうワラワラ動くやつは見ていて楽しいらしく結構好評でした。

実物はこちらでご覧いただけます。
(Scratchはflashで動いているので基本PC限定です。windowsタブレットならいけるかも)

こういうちょっとしたシミュレーションは、実験や観察の代わりとしても面白いと思います。
また何か作ったら報告します。

子供向け特化のタイピング学習ゲームをつくる(1)

こんにちは、まなゲー池田です。
タイピング練習ができるサービスは色々あるみたいですが、どうせならついでに漢字の勉強や復習もしちゃったり、できることなら語彙も増やしたりしたいなぁ、何よりレベルデザインを自分でやりたい!と以前から思っていて、問題や設定を自分で決めたいので、この際だから作ってウチの「まなゲーらんど」で公開しちゃおう。ということで、ハイ作ります!!

ひとまずゲーム云々はおいといて

タイトルも詳細も全く未定ですが、ひとまずゲーム以前にタイピング練習サービスとして必須の機能を作っていきたいと思います。

  • (1)キーボードからの入力を受けて画面に英数字や記号を表示したり変数に格納したり
  • (2)ローマ字正答データと入力されたデータを随時照合して、正誤評価を行う

というイメージで作っていきます。

ローマ字データの手動作成は絶対無理だと気がついた

(1)はサクッと出来ました。

window.addEventlistener(‘keydown’,catchInput);

こんな感じで、キー入力(キーコード)を受け取れるので、受け取ったキーコードに応じた文字・記号をそれ用の変数に入れてやるだけです。

(2)も、とりあえず仮の正答データを作って、キー入力を受け取るたびに、そこまでに入力された回答と正答データ(仮)の同じ文字数の部分までが一致するかどうかを判定して、一致していればそこまでの入力結果を画面に出してやる。という感じで行けたんですが、ここでハタと気がつきました。

これ・・・正答データ作るの超めんどくさいんじゃないか?

かな文字をローマ字に変換する際、例えば「し」はsiでもいいし、shiでもいけます。となると、ローマ字解答データを2つ作っておいて、両方を入力結果と照合しながら、どちらかと一致していればそこまでは正解、という具合に処理していかなければなりません。2種類ずつ、ぐらいならなんとか根性で乗り切ることも可能なのかもしれませんが、例えば「しんぶんし」とかだと、「ん」をnnで入力するパターンとnで済ませるパターンも合わせると…

“sinnbunnsi”, “shinnbunnsi”, “sinbunnsi”, “shinbunnsi”, “sinnbunsi”, “shinnbunsi”, “sinbunsi”, “shinbunsi”, “sinnbunnshi”, “shinnbunnshi”, “sinbunnshi”, “shinbunnshi”, “sinnbunshi”, “shinnbunshi”, “sinbunshi”, “shinbunshi”

たかがひらがな5文字の変換パターンが16種類もあるではありませんか・・・。これは絶対心が折れる、いや、根性以前の問題として、手動では絶対きちんと網羅できそうにない。少なくとも数百問、もしかしたら1000問単位で問題を作るかもしれないというのに・・・っ!

ということで、追加クエスト「(3)ひらがな正答データをもとにローマ字正答データを自動作成できるアルゴリズムを組む」が発生しました。

絶対作っとかないといけないデータを我慢して作る

自動作成アルゴリズムを作ると言っても、「ローマ字早見表」レベルの情報は人が作って与えてやらねばなりません。
こんな感じの微妙な配列データを作成します。

//かな >> ローマ字変換用データ
var listRoman = [
[“あ”,[“a”]],[“い”,[“i”]],[“う”,[“u”]],[“え”,[“e”]],[“お”,[“o”]],
[“か”,[“ka”]],[“き”,[“ki”]],[“く”,[“ku”]],[“け”,[“ke”]],[“こ”,[“ko”]],
[“さ”,[“sa”]],[“し”,[“si”,”shi”]],[“す”,[“su”]],[“せ”,[“se”]],[“そ”,[“so”]],
[“た”,[“ta”]],[“ち”,[“ti”,”chi”]],[“つ”,[“tu”,”tsu”]],[“て”,[“te”]],[“と”,[“to”]],
[“な”,[“na”]],[“に”,[“ni”]],[“ぬ”,[“nu”]],[“ね”,[“ne”]],[“の”,[“no”]],
[“は”,[“ha”]],[“ひ”,[“hi”]],[“ふ”,[“hu”,”fu”]],[“へ”,[“he”]],[“ほ”,[“ho”]],
[“ま”,[“ma”]],[“み”,[“mi”]],[“む”,[“mu”]],[“め”,[“me”]],[“も”,[“mo”]],
[“や”,[“ya”]],[“ゆ”,[“yu”]],[“よ”,[“yo”]],
……
];

単純作業が死ぬほど苦手なので、これだけでもう心が折れそうなんですが、歯を食いしばってカチカチ入力しました。

ひらがな → ローマ字変換アルゴリズムを考える

ひらがなで与えられた任意の文字列データを、ローマ字データへと変換するには、
si、shiなどのAltな変換に加え、「拗音」「促音」「発音」を含む文字列への対策を施さなければいけません。

「拗音」対策

「ゃ、ゅ、ょ」を含むやつです。「きゃ」とか「ちょ」とか、セットで扱われようとしてくる困ったやつら。「1文字ずつ変換だというとろーが!」と叫びたくなりますが、ぐっとこらえて、「先に次の文字を確認して、そこに拗音が見つかったら2文字セットで変換候補を探す」というルールを作ります。

「促音」対策

「っ」を見つけたら、「っ」があったぞ!という情報だけをキープしておいて次の文字へ進みます。で、次の文字を変換・追加するときに、最初の子音を2重にすることで対策としました。

「撥音」対策

「ん」ですね。nnかn。「n」だけで大丈夫なケースも多いですが、次の文字が「あいうえお」「なにぬねの」のいずれかの場合は「nn」としておかないと、「こんいちは」みたいなことになります。(今、入力してみて気づいたんですが「こんいちは」と打とうとしても勝手に「こんにちは」になおしてくれました。タイプミスが減ったのだと思っていたら、こっそりPC側でフォローしてくれてたのか。)

これらの、拗音・促音・撥音対策を施しつつ、複数の変換候補を持つ「かな」が出てくるたびに、場合分けして、正解となりうるローマ字変換パターンを網羅していきます。

しばらくウンウン唸って、かな文字列を与えられたら、ローマ字変換パターンを網羅して返す関数(80行ほど)をひねり出しました。

こうして数時間の格闘の結果、ひとまず動くようになったのがこちら。

まなゲータイピング(仮)ver.00

かな文字が問題。グレーがローマ字正答例。黄色が入力済みの部分です。
正答例がひとつしか表示されませんが、zikannをjikannなどとしてもちゃんと正解になるはず。

サンプル問題20問ほどしか入っていませんので、ちょいちょい同じのが連続で出ちゃいますが、ひとまず動きます。(ゲーム性どころか、得点も評価も、終わりすらありません;;)

あちこち調整が必要になるかもしれませんが、必須な部分はだいたい出来ましたので、次から評価など行えるようにしつつ、遊びっぽさを加えていきたいと思います。

この程度でも、書いたプログラムが狙い通りに動くと、じわっと脳から何かが出る感じがしますね。
シミュレーション系のゲームの攻略や、クラフト系ゲームで狙い通りに行った時に通じる気持ちの良さがあります。
しかも、書いたコードをあらためて見てみると、配列やら文字列操作の基本がええ具合に網羅されてて、教材にするのもいいなぁと思うったりして、一石二鳥の制作となりました。

つづく

大学入試共通テスト国語はすごく変わったとも言えるし、全然変わってないとも言える


こんにちは、まなゲー池田です。

先日、2020年から始まる大学入試共通テスト、のプレテストが実施されましたね。
問題と解答が公開されていたので、予備校国語講師歴約10年(過去)の僕がやってみて思ったところをできるだけ簡潔(×雑)に書いてみます。

変わったところ

  • ・記述問題(大問1つ分)が追加された。
  • ・制限時間的にキツくなった

変わらないところ

身もフタもない言い方になってしまいますが…。

基本的に昔ながらのやり方で、どの問題も解ける

以上!!

というのは、さすがにアレなので、もうちょっとだけ詳しく。
複数の資料をみくらべさせられたり、誰かの意見ぽく選択肢が書かれてあったり、というのはあるものの、いずれも表面的な変化でしかなく、
漢字や語彙、古典の文法系をのぞき、文章や資料、そして問題分野選択肢の内容の「整理整頓」ができれば解けます。

記述問題も(当然といえば当然ですが)、きちんと採点基準を作らねばならない以上、解釈の余地のある問題は出せません。
問いに対する必要十分な解答になるよう、文章・資料から一部を抜き出し、指定の文字数に収まるようにまとめる練習で対応できます。

僕が現役で教えていた頃のやり方、そのまんまで十分対応出来る出題・採点基準となっていました。
採点基準を明確にして点数をつけねばならない以上、変えようがないんですね。
(もし回答者の意見などを答えさせるとすれば、それは「書いてあるかどうか」しか評価することができません。)

ただし、制限時間がキツくなったのは、大きな変化です。
このまま導入されるなら、時間内に回答を終えられない生徒さんが続出すると思います。
ある程度の反復練習を行って、読み・解きのパターンを持たないと大変そう。
その意味では、入試改革の目指す方向とは逆に、パターン認知力を問う方へと行ってしまっている感があります。

家庭でできること

予備校講師時代、いつも言っていたことですが、文系理系問わず、国語で点を稼げるとすんごく有利です。
(レベルが上がるほど、他の科目では差がつかなくなるのでなおさら…)
一方で、読書は好きなのに国語の成績はイマイチというのもよく聞く話。これも理由があります。

面白い「お話」をどれだけ読んでも、語彙は増えるかもしれませんが、文章を「整理」する力はあんまり育ちそうにありません。
また、語彙についても、お話の語彙と、説明文や論説文の語彙とは範囲が随分異なります。

読書の中に、少しでいいので説明的・論理的な文章が混ざるように仕向けていく。
そのために、科学(社会科学を含む)や時事問題に関心を持つように仕向けていく。
(これは本を読むこの場合、読まない子はとりあえずなんでもいいから読ませるところからになります。)

そのためには、親がまずそれを実行することです。そして話題にそれらを混ぜていく。
まぁまぁ面倒ですが、例えば僕は、寝る前に「自分が今読んでる本の面白かったところ」を読み聞かせしたりしています。

学校でして欲しいこと

本当いうと、学校でもうちょっとそういう文章を取り上げてくれたらいいんですけどね。
文学作品を読んで、クラス全員の「私の感想・意見」とか、良いんですけど、受験的には何の意味もないですから。
(それはそれでやってくれたら良いんですよ。でも分けて欲しいし、偏りすぎだと思う。)
それだったら、解釈の余地の少ない文章を読んで、それでも解釈が分かれる。なぜ分かれる。客観的なのはどの見方。など考える授業もして欲しいなぁと、すごく思います。すんごく。

開花を急ぐリスクも考えなければいけない

11月中旬。紅葉を背景に咲く、狂い咲きの桜。
美しく咲いても決して実を結ばないこの花から、僕らは何を学び得るだろう。

より早く、より高くと育てた大切な若芽が、見事な花を咲かせたその先には、苛烈な冬が待っているかもしれない。
花を咲かせることに、全力を振り絞ってしまったら、どうやってその冬に耐えられるのだろうか。

選択と集中は、ハイリスクな賭けだ。まばゆい成功例の足元に無数の屍が転がる。
子ども時代は、いつか当人が賭けに身を投じる日に向けて、じっくりあちらこちらへ根を伸ばす時だと思う。

どれほど甘美な成功も、一瞬後には幸福を減じてしまう。
より大きな成功だけがもたらす一時の至福を追い続ける。
そんな一生が冬のような生き方を我が子にして欲しいとは、僕には到底思えない。

僕は雪国の人間だから、冬の凜とした美しさはもちろん、それが他の季節をより美しくしているであろうことも知っているつもりだ。
けれど、冬がなくとも生き物は育ち、花を咲かせ、実を実らせる。冬なんてただのオプションだと思う。

もちろん、傍目にものすごくキツそうに見える積み重ねの日々が「冬」であるか否かは、当人次第であるけれど、その道へは、しかるべき日に、自ら選びとって踏み込むべきなんだ。

親の仕事は花を咲かせようとすることではなく、時に助け、時に突き放しつつ、しなやかで折れない強さを育てることだ。
改めてそう思う出会いだった。

敢えてテキストだけで作った教材用ゲームが楽しくなってきた

こんにちは、まなゲー池田です。
技術系の専門学校でプログラミングの授業をいくつかもたせてもらっているんですが、初学者向け学習用の教材があんまり堅いと、学生の目がどんどん死んでいくので、大事なことを盛り込みつつ、楽しめる教材を作ろうということで、テキストのみで構成されたRPGゲームを作ってみたんですが、作ってるうちにだんだん自分が楽しくなってきてしまい、必要以上に作りこんでしまいそうな気配。

画面はこんな感じで、すべて文字のみで構成されています。いわゆる「ローグライク」型のダンジョン探索RPGで、プレイするたびにランダムにマップが作成され、モンスターやアイテムが配置されます。プレイヤーが移動など何か行動を行うたびに、モンスターたちも行動します。戦闘してモンスターを倒すことも可能ですが、戦っても経験値によるレベルアップなどはないので、戦いは出来るだけさけつつ下階へと向かうのを基本方針としながら、どこまで潜れるかに挑戦するゲームになっています。

先へ進むほどに、フロアは広くなり、モンスターも強くなっていきます。アイテムにはプレイヤーを強化するものもあるので、出来るだけ多くの宝箱を覗きながら進みたいのですが、それだけ多くのモンスターと戦うことになってしまう上に、プレイヤーのステータスとして空腹度が設定されており、何かするたびに減少していき、ゼロになると毎ターンダメージを受けてしまうため、時にはアイテムを取りに行かない判断も必要となります。

プログラムはJavaScriptで書いているのですが、出力先もあえてHTML上ではなく、Chromeのデベロッパーツールのコンソール画面上に出しています。文字だけの極めて貧弱なビジュアルですが、これでも多少見やすいように変換されていて、実際のデータはこんな感じの2次元配列になっています。

エクセルのシートみたいなものをイメージしてもらい、セルごとに一つの数値が入っていると思ってもらうと分かりやすいでしょうか。1が壁、0が通路、6がモンスターで9がプレイヤー、という具合です。

せっかくなので、普通にゲームっぽい画面でも遊べるようにしてみようということで、enchant.jsを使ってマップをキャラクターを描写するようにしてみました。

ここまでくると、分かりやすくゲームっぽくなりますが、それはあくまで見栄えだけの変化であって、本質的には、先にお見せしたような2次元配列上をひとつの世界に見立て、その中を連続的に書き換えていくことによって、メモリ上にオブジェクトたちが相互に干渉し合う系を再現しているわけです。エクセルで家計簿をつけるのも、データベースで販売管理をするのも、ゲームを作るのも、そういう意味ではあまり変わらない行為なんだ、という感じも、伝えられたらいいなぁ、と思っています。

もうちょっと作りこんだら、せっかくなので公開して、遊んでもらえるようにするかも。
ではまた!

モラトリアムこそが人をヒトにしたのかもしれない

学力や性質などが、どこまで遺伝によって決まってしまうのか、というのは教育に関わるものとして非常に気になるテーマです。

一方で生物学の世界では、遺伝子による説明が難しい部分についての研究も進んできていて、エピジェネティック(遺伝子外)と呼ばれる分野が確立されてきているようです。

その研究成果の一つに、とても興味を惹かれたので紹介したいと思います。

人とチンパンジーが遺伝子的にはほとんど変わらない(2%ほど)という話は、以前からよく知られています。では、最近いろんなところで活用されまくっている遺伝子組み換えの技術を使って、その2%の部分を同じにしてしまったとしたら、チンパンジーは人間になるのか?というとそうはならないようで、そのあたりが遺伝子「外」の問題らしいのですが、現在注目されているのは、どの遺伝子が、いつ頃、どのくらい、活性化されるのかの違いで、コツコツ試料を集めて、我々とチンパンジーの脳で、どのように遺伝子の活性状況が異なるのかを調べていくと、大人への成長を促す部分の活性化が起こるのが、チンパンジーと比べてとてもゆっくりだということがわかってきているようです。

遺伝子的にほとんど同じ、ほとんどを「全く」にしたとしても、チンパンジーは人にはならない、とすれば、この違いこそが、人を人にしたのかもしれないということです。

もちろん、研究はまだまだ途上にあるものでしょうし、このことから直ちに日々の子育てや家庭教育をどうの、というのは性急にすぎるでしょうが、子どもたちが急いで大人にならなければならないような環境圧をかけることは、知的な成長を妨げる可能性があるかもしれない、というぐらいを頭のどこか、時々思い出せるぐらいの場所に、改めて置いておくのは悪いことではないように思います。

私たち親は、つい子どもが早めに成長することに安堵を覚え、それを期待し、ゆっくりだったり、停滞や逆行が起こると不安や落胆を感じてしまったりするわけですが、それにグッと堪えて、寄り道や回り道を見守ることこそが、長期的な成長や到達点の高さへとつながるのかもしれません。そう思うと「うちの子ったら・・・」という気持ちも、ちょっと楽になるかも、しれませんね。

子どもとゲームで悩んだら考えてみてほしいこと:その3

ゲームと暴力犯罪に、因果関係はありません。

暴力的なゲームをしたら子どもが犯罪者になってしまう!的な妄言が、いつまでたっても無くなりませんが、過去にハーバード大学で150万ドルの予算をかけて行われた大規模研究があり、その中には「因果関係がある!」と主張した様々な論文の検証も含まれていましたが、それらの論文は全て妥当性を否定されています。研究全体の結論としては「少なくとも、因果関係があるとは言えない。むしろ抑止的に機能している面すらある」というものでした。
前回も書きましたが、この手のゲーム危険論が繰り返し繰り返しメディアに登場するのは、「ウケるから」、つまり不安に駆られた皆さんがそういう情報を「見るから」です。重要だからでも、事実だからでもありません。

不安を煽る情報と、そうでない情報では、確実に前者がビューを稼ぐことができます。それがわかっているので、収益を意識するメディアは必然的に前者をばらまくことになります。他人の不安こそが彼らの「飯の種」なのですから。
銃や剣を構えて、画面上に現れるモンスターや人を、撃ちまくる、斬りまくる、
こんなゲームに熱中している姿を見て不安になる気持ちはわかります。

が、それを煽って利用しようとする情報に踊らされないことが肝心です。

まぁ、そもそも、ハーバードでの研究結果など持ち出すまでもなく、これだけゲームが普及して、多くの、というか大半の子ども達がリアルな暴力描写のゲームに日常的に触れて過ごし、ゲームで遊ぶ人々の平均年齢が40代に達した現在、もしも、ゲームと暴力犯罪に因果関係なんてものが存在していたら、とっくに我々の社会は崩壊しています。

あまり知られていませんが、1983年のファミリーコンピューター発売以後、今日に至るまで、少年凶悪犯罪(殺人・強姦など)の件数が全体としては一貫して顕著な低下傾向にあることも、ぜひ知っておいていただきたい情報です。

(短期的には、ググーッと上がる時期もあって、そこだけ取り出して利用されるケースも多いです。絶対わかっててやってるだろ!と突っ込みたくなる)

とはいえ、感情とは厄介なもの。不安を煽る情報に触れてしまえば、煽られないようにコントロールすることは困難かもしれません。

ですから、一番手っ取り早いのはおそらく、テレビを見る時間、ネットをうろつく時間を、「大人が」減らし、いい加減な情報に出来るだけ触れないようにすることです。

えー、今から、とても失礼なことを言います。
でも、とてもとても大事なことなので、やっぱり書きます。
僕が嫌われることになっても仕方ない、でも、できれば怒らないで聞いてください;;

そのような情報を鵜呑みにして不安に駆られるということ自体が、大変失礼ながら、あなた自身のメディア・リテラシーの低さを示していると言えるのです。

そのツケを、大事なお子さんに回してしまわないためにも、それを自覚した上で、情報に接する、あるいは触れない、ようにしましょう。

・不安を煽る見出しを発見する
・大事な情報だと思って読む(観る)
・不安に駆られて精神が不安定に
・家族にその悪影響が及ぶ一方で、何も解決しない

こうなるくらいなら、いっそ全く情報に触れないほうが絶対にマシですよね。
せめて2番目を「読まない(観ない)」にできれば随分違います。

無駄に不安にならないこと、そんな不安に子ども(家族)を巻き込まないこと。
あれ、今日も結論は同じ、ということになりました(笑)

次回は、ゲームへの執着(内容そのものでなく)がもたらす問題行動、に触れたいと思います。

【子どもとゲームで悩んだら考えてみてほしいこと:その2】

池田です。子どもとゲームで悩むお母さん(お父さん)がラクになる話を、と思って書き始めましたが、2回目にして早速、あまりラクにならない話かも・・・。でも、最終的にラクになるためのお話なんでご容赦を。

ゲームに関する一番の問題は何でしょう?それをきちんと知っておきましょう

子どもとゲームで悩むお母さんからよく聞く不安・問題といえば、

(1)人格形成上の悪影響からの非行・犯罪
(2)過度の執着からの問題行動
(3)長時間プレイからの生活の乱れ

このあたりがベスト3というところだと思います。
そのままメディアでよくみる内容・順番なのですが、
意図的なのかどうか、このリストからは最も重要かつ深刻なものが抜けおちています。

それは、

ゲームを挟んで対立することによる親子関係の悪化

です。

(1)-(3)に対する不安が、感情的な言葉のやり取りを生み、
感情的な言葉のやり取りが親子関係の悪化を招き、日々の生活に影を落とし、
結果的に、(1)-(3)の問題を生じやすく、かつ、解消しにくくさえしてしまいます。

不安→対立→状況悪化→不安悪化→対立悪化→状況さらに悪化

こんな最悪のループに陥らないために、
お子さんとゲームについて、不安や悩みを抱えていればこそ、
その生の感情をお子さんにぶつけることをこそ、まずやめなければならないのです。

メディアを通じて、(1)-(3)に関する情報を繰り返し聞かされるうちに、
それらの情報が重要かつ信ぴょう性の高いものだと錯覚してしまいやすいのですが、
メディアがそれらのネタを繰り返し使うのは、重要だから、ではありません。
単にそれが手堅くウケる(多くの人の注目を集めやすい)ネタだからでしかありません。

ウケ狙いの煽り情報に踊らされてはいけません。

あなたとお子さんが、ゲームを挟んで対立関係にある限り、
あなたの不安や悩みは、悪化こそすれ、解決することはないのです。

その意味では、

大人が情報に振り回されてしまうことこそが一番の問題

だともいえます。

ですから、ゲームに関して、不安や悩みを抱えた時、
まずするべきことは、メディアの煽りに振り回されないように注意しつつ、
親子関係を良好に保ち、あなたの言葉がきちんとお子さんに届く状況を作っていくことです。

「あなたのためを思って…」と言いながら、自分の不安をぶつけるのではなく、

お子さんのために、あなた自身のために、まずは目の前の不安に耐える覚悟をしなければなりません。

その上で、振り回されないだけの知識、良好な関係を保ちつつ、状況を良くしていくための技術・態度・姿勢を身につけねばなりません。

知るべきこと、学ぶべきことはいろいろあります。
少しずつ考えていきましょう。

今回は、やや前回に似た内容になりましたが、一番大事なところなので。

次は、(1)(2)(3)についてもう少し掘り下げて考え、問題を明確化して絞り込んでいきたいと思います。

【子どもとゲームで悩んだら考えてみてほしいこと:その1】

池田です。最近改めて、お母さんたちゲームのことで悩んでるなー、と思ったので、僕の経験や知識の範囲からですが、少しお話ししてみようと思います。出来るだけ読んでくれた方がラクになる内容にしたいなと思います。

それでは早速始めます。

ゲームはお子さんの「宝物」です。大事に扱いましょう

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あなたにとってのゲームは「悪」かもしれません。「敵」あるいは「毒」かもしれません。でも、ゲーム好きな子ども達にとって、ゲームは「大切な宝物」です。

自分が大切にしている宝物、その宝物の悪口ばかりを言う人、それを大切にしている自分のことまで悪く言う人、そんな人の話すことを誰が聞く気になるでしょうか?

例えば、スポーツ等に打ち込む我が子に、その競技の悪口ばかり言ったり、没頭する我が子に暇さえあれば罵声を投げかけたり、そんな親は普通いません。

が、対象がゲームとなると、なぜか皆さん言いたい放題大暴れ。もはやコワイ人です。

スポーツには打ち込む価値があるんだっ!ゲームなんかと違って!!ですか?

そのへんはまた改めて検討するとして、今はそこは問題ではありません。

我が子の「大切なもの」を、ひとまずきちんと評価しようとしてみる。
そこから始めてみませんか?という提案です。

ゲーム好きな子どもと、ゲーム嫌いな親、両者のコミュニケーションは、
もはや完全なる「異文化コミュニケーション」いや「異星」間かも(笑)

全ては、相手の「文化」を認めるところから、そこからしか道は開けないのであります。

勉強、やる気、ゲームに関する論文

論文イメージ

池田が2015年度に大阪府松原市で行った実践に関する事柄を中心にまとめた、勉強、やる気、ゲームに関する論文が「奈良学園大学紀要第五集」に掲載されました。

学習意欲を「引き出す」のではなく、すでに子供たちが持っているはずのソレを「解放」すると言う視点に立った「解放指向アプローチ」に基づく一連の取り組み(実施後アンケートで参加児童の約83%で勉強との関係に前向きな変化が報告されました)と、その背景についてまとめたものです。

結構面白い内容になったと思いますので「やる気」に興味をお持ちの皆さんは是非ご一読ください。ご意見・ご感想などお聞かせ頂ければ幸いです。

論文:勉強とやる気、そしてゲーム

リンク先はPDFファイルです。本文は15000字ほどになりますので、とりあえず要約だけ見ていただいて興味がわいたら続きを読んでいただければと思います。

本文より「要約」のみ抽出

我が国においては、以前より、児童生徒の学習意欲および自己評価の低迷が指摘され、いわゆる「やる気のなさ」が問題視されている。しかし、筆者が複数の小学校で行った児童からの聞き取り結果を、古典的動機づけ理論および近年の無意識研究の成果に照らして鑑みると、彼らの状況は「やる気はある、しかし取り組めない」と評価する方が妥当であると考えられる。そこで、無意識主導の行動決定モデルのもと、意識、無意識両方に働きかけ、児童らが既に持っている学習意欲を抑え込まれた状態から解放し、行動へと繋がりやすくすることを目的に、学習ゲーム体験を軸とした一連のワークショップをデザインし、これを「やる気解放アプローチ」と名付けた。このアプローチを児童(小学4、5年生140人)に試みた結果、アンケートにおいて82.9%の児童に勉強観・自己評価の前向きな変化が見られ、48.6%の児童が、以前よりも勉強を頑張れるようになったと回答した。これらの結果は、やる気解放指向アプローチの有効性、およびその実施のためのツールとしての学習ゲームの有用性を示唆している。

今回は、論文として書いたので、全体に言葉も硬めです。また今後このブログ上などで、もっと平易な表現で分かりやすく書ければと思っています。